厚木看護専門学校

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あつかんコラム

「心に残る看護エピソード【約束の温泉】」

2024.02.07

実習で、統合失調症の70代の患者さんを受け持った学生を指導したときのことです。

この患者さんは、入浴を常に拒んでしまうので、清潔ケアが課題となっていました。ある日、病院の入口で佇んでいる姿をみかけたので入浴しない理由をたずねると、「息子と温泉に行く約束をしたからそれまでは風呂に入らない」とのことでした。そのことを学生に伝えると、学生は患者さんと関わり「温泉なら入る」という言葉を引き出しました。

他の学生たちとともに入浴日に、病室を温泉旅館に見立て、色画用紙で「楓の間」や「もみじの間」といった名前を貼り、風呂場の入り口には「男湯」と書いたのれんを下げました。浴室内の蛇口にはもみじの人工枝を絡ませ、大きな浴槽には入浴剤を入れ、更に壁には青と白のビニールテープで富士山を作りました。学生が患者さんに「温泉にいきましょう」と声をかけると、入浴を拒むことなく学生とともにのれんをくぐってくれました。ゆったりと浴槽につかってくれたのは言うまでもありません。学生の発案でしたが、医師だけでなく病棟全体で支援してくれたことは今でも忘れられないエピソードです。

看護学科 三浦 英子

 

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