忘れられない看護(教育)エピソード ~雪と母と金子さん~
2021.02.17
平成26年2月、関東は記録的な豪雪で、社会の機能が麻痺する雪害に見舞われた日に、私の母は自宅で息を引き取りました。
末期癌であった母の希望で在宅療養を選択し、その時、訪問診療に同行する看護師の金子さんと出会いました。
私:「着替えをしたいんですが手伝っていただけますか?」
金子さん:「もちろんです!」
私:「母の背中を拭きたいのですが…」
金子さん:「もちろんです!」
金子さんはいつも快くお手伝いしてくれました。
母が亡くなった朝、街は雪に覆いつくされ、私は知り合いに訃報の連絡をし、「この雪ではお別れに来ていただくことは無理なので…」と伝えました。
家族だけの静かな時間が流れていきました。
『ピンポーン』
突然インターホンが鳴り、外には雪まみれの金子さんが…。
「ご愁傷さまです」
息を切らしながら挨拶する金子さん。
聞けば雪と格闘しながら、徒歩で3時間かけて到着したとのこと。
私:「お別れに来てくださったんですか?」
金子さん:「もちろんです!」
ああ、この人にとって、患者のために3時間かけて雪の道のりを歩いてくることは「もちろん」のことなのだ。
人生で最も悲しかった日に、人生で最も癒された出来事でした。
金子さんと同じ、看護師である自分が訳もなく誇らしく、そして思いました。
「また明日から、もちろん、がんばれる!」
副学校長 五十嵐一美