海外の看護事情~出産を支える視点も国によって違う~
2025.07.23
当校では、2年生で「外国人にとっての周産期看護」について学び、3年生では実際に母性看護実習に参加します。
ある学生は、英語と母国語を話す外国人のお母さんを実習で担当しました。言葉の壁を感じながらも、翻訳アプリやジェスチャーを使って少しずつ信頼関係を築いていきました。文化の違いにも注意を払いながら、授乳や新生児のケアについて説明を工夫し、安心してもらえるよう努めていました。
その中で学生が抱いたのが、「このお母さんは、出産後どこで子育てをするのだろう?」という疑問です。しばらく日本で生活を続けるのか、早期に母国に帰国するのかで、育児環境も支援制度も大きく変わるからです。
たとえば日本では、法律で産後8週間の産休が保障されており、さらに育児休業を1年以上取得できる環境が整いつつあります。保健師による家庭訪問や自治体の子育て支援も充実しています。一方、アメリカでは州によって制度が異なりますが、産後の有給休暇が法的に保障されていない地域も多く、無給であっても12週間が限度となるケースが一般的です。
こうした制度の違いは、退院後の生活設計や心身の回復のペース、家族のサポート体制にも影響します。出産直後の看護では、退院後の生活を見据えた支援が必要ですが、そのためには「どの国の制度のもとで育児をするのか」をふまえて関わることが重要になります。
学生は実習を通して、「制度の違い=看護の視点の違い」であることに気づきました。文化や背景が多様化するいま、相手の立場に立って看護を組み立てる力が、ますます求められています。
看護学科 三浦 夏枝